2023-01-23

【Marvelous Designer】布を「硬く/柔らかく」するツールを徹底解説!

布を硬くするような機能の違いがわかりにくいので徹底解説!Strengthen, Solidify, Bond, Skive(日本語:強化, 形状保持, 芯, 漉き)など

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使用ソフトウェアバージョン備考
Marvelous Designer12(7.1.143)英語版

布を硬く(強く)する機能

Marvelous Designerには布を硬く(柔らかく)する機能が備わっている。

実際の洋裁でも「接着芯」や「伸び止めテープ」等よく使うが、これに関する機能がいろいろ存在し、わかりにくい。

この記事で徹底解説する。

Strengthen

日本語:強化

3Dウィンドウで布を右クリックすることで選択できる(解除も同じ操作)

ショートカットはctrl + H

strengthenのメニュー

Strengthenの効果

一時的に布を強化することにより曲がりにくくなったり、シワを伸ばす効果がある。

イメージ的には平面的に広がろうとする効果。

この機能は他の機能に比べて最も硬い布になる(Freezeは別物とする)

例えば次のようにシワになっている袖(まだ何もしていない)

皺の袖

Strengthenをかけてみると(まだシミュレーションしていない)

オレンジに変化

オレンジ色に変化した箇所がStrengthenがかかっている場所。

シミュレーションを実行すると

シワが伸びている

シワが伸びていることがわかる。

演算中に袖を引っ張ってやると

演算中に袖を引っ張る

さらにシワがなくなり、平坦になる。

いつ使う?

公式解説では、自然な重力で伸びるようなシワが演算の時に摩擦で滑り落ちてこない時に使うと良いとのこと。

逆に伸びすぎてしまった場合はStrengthenを解除した後、そのままもう一度シミュレーションすると自然なシワに戻っていく。

それ以外にも、布をシミュレーションしながら縫い合わせていく時に形状が崩れてしまってうまくできない時などに使う。

使ったら解除すること

Strengthenはそもそもシミュレーションの補助用なので、常用するものではないとのこと。

ほしい形状にシワが伸びたらこの設定は解除しよう。

Solidify

日本語:形状保持

3Dウィンドウで布を右クリックすることで選択できる(解除も同じ操作)

メニュー外観

この機能はプロパティエディタからでも利用できる。

Solidifyの効果

こちらはシワをシワのまま維持しようとする機能。

先程の例にもう一度適用してみる。

適用後白くなる

この状態で演算をしても何も変わらない

何も変わらない

すこしわかりにくいので演算中にこの袖をひっぱってみると

シワがのこったまま引っ張られる

わずかに伸びたが、シワを維持しようとする。

逆にSolidifyを解除して引っ張るとシワはもとに戻る。

伸び切る

Partial Solidify

パターン単位ではなくポリゴンを選択してSolidifyできる。

Select Mesh系(メッシュ選択)でメッシュの一部を選択して

Select Meshを使う

右クリックから設定する。

右クリックメニュー

パターンに縛られずポリゴン単位で好きな箇所をSolidifyできる。

好きな箇所

Marvelous Designer 11から追加された機能。

いつ使う?

公式によるとジーンズの膝裏のようなシワがデザインに織り込まれているようなものに使うとよいとのこと。

個人的にはあまり使った記憶がないが、他にもギャザーなどが演算中に一部崩れたりするのを防げるかも。

プロパティ側でも設定できる項目なので、デザイン用途でずっとONにしておいても良いかも?このあたりは要検証。

Freeze

日本語:固定

3Dウィンドウで布を右クリックすることで選択できる(解除も同じ操作)

完全に布が固まる。凍ったような状態。

フリーズ外観

適用後は布が水色になる。

演算しても1ミリも動かない上に、指で引っ張っても動かない。

重力も作用しないので空中に浮いたままになる。

動かなくはなるが演算コストは消費する。

演算も軽くしたい場合はDeactivateしよう。

すこし特殊な機能

これは物理演算から除外されるといっても過言ではない(コリジョンや縫い目は残る)

したがって「硬く/柔らかく」という概念とは別物だと考えても良いかと思う。

あくまで一時的な補助機能。

使ったら解除しよう

こちらも実際の洋裁で使う物ではないので、演算が終わったら解除することを推奨。

Bond

日本語:芯

プロパティウィンドウから設定する。

Bondプロパティ外観

Bondの効果

恐らく本物の洋裁で「接着芯」を再現しているツールだと思われる。

接着芯とは、使用する布とは別にボンド付きの布を貼り付けて補強するもの。

実際には襟ぐりや前立て(ボタン部分の布)、カフス等に付けることが多いと思う。

布が伸びやすいところに使って補強する。

Bondの例

非常に柔らかいシルクの布にボタンを付けて引っ張ってみる例。

まずは何も設定していない状態。

伸びているボタン付きの布

この布にBondを適用すると

Bond後シワが減った

シワが減った。

このように実際の洋裁で使う場合と同じような使い方で良いと思う。

シワになってほしくない部分に使うなども良さそう。

変化がわかりにくい

上では最も変化が顕著な例を掲載した。

この機能、実際はかなり僅かな変化しかないため本当に布が補強されているのかわかりにくい。

よりリアルなものにするために僅かな効果を狙って使っていく物だと思われる。

ONのままで良い

Strengthenなどは使ったら解除を推奨しているが、こちらは実際の洋裁でも使うものなのでオンのままで良い(たぶん)

部分的にBond

パターンの一部分だけをBondすることもできる。

インターナルラインで囲ってTransform Pattern(パターン変形)で囲われているインターナルラインを選択しプロパティから設定する。

部分Bond

Skive

日本語:漉き

日本語の読み方は「すき」

パターンを選択してプロパティエディタから設定する。

メニュー外観

Skiveの効果

Bondとは対称的に布を柔らかく(伸びやすく)変化させる。

先程のボタンと同じ例確認する。

何も設定していない状態

Skiev

Skiev後

より伸びやすくなり、シワも増えた。

「漉き(すき)」というのは革細工で素材を削って薄くする加工のことだそう。

「紙を漉く」と同じ漢字でもある。

伸びやすさの設定

設定のPercent(比率)が低いほうが柔らかくなる。

すこしわかりにくいので注意。

Seam Taping

日本語:伸び止めテープ

2D Windowからツールをクリックして

Seam Tapingアイコン

テープを張りたい辺をクリックすると適用される。

Seam Taping後

削除したい場合は、適用されている辺を右クリックしてDelete Seam Tape(伸び止めテープ削除)

辺のプロパティウィンドウにもSeam Tapingの項目があるのでチェックして適用もできる。

適用された箇所はオレンジ色になる。

Seam Tapingの効果

布の縁だけ硬くする物だと理解しておいて問題ないかと思う。

本当の洋裁でも「伸び止めテープ」という商品があり、こちらも「接着芯」をテープ状にしたものとほぼ同義。

本来は肩や袖ぐり、首周りなど布が伸びてほしくない箇所に使うものだが...

効果がわかりにくい

使ってみるととても効果が微妙で上級者向けという印象。

こちらはBondよりも更に狭い部分にだけ適用することになるのでより一層効果がわかりにくいツールとなっている。

アニメーションでは大きく効果がでるかもしれないが、私の経験不足により未検証。

できるだけわかりやすい例

Seam Tapingを使って一番効果がわかりやすい例を掲載しておく。

布を上方向に縫い付けて、そのまま垂れさせる。

縦に縫うと布が垂れる

縫い目の部分にSeam Tapingをかけてみると

縁が硬くなったためアーチが大きくなった

当然だがStrengthenBondかけても似たような効果にはなる。

しかし上記2つだと布全体が硬くなるので、よりアーチが外に開く形状になる。

かなり微妙な違い。

伸びとあまり関係ない?

上の例は布が硬くなったイメージだけの例で「伸びを防止している」というイメージはない。

私が色々試した限りでは実際の洋裁で使う目的のようなケースでシミュレーションに大きく影響するケースがなかった。

このあたりはアニメーションでの影響も含めさらなる実験が必要そう。

テープ幅を変更する

プロパティウィンドウのWidth(幅)からテープの幅を変更できる。

Width

似て非なる機能

3D WindowのツールでPiping(パイピング), Binding(バインダー)というツールがある。

Piping Binding

こちらは布の端処理で使用するツールであり布を硬くするという目的で使うものではない。

実際の洋裁でもこの機能のバイアステープ等があるが、こちらは「バイアス方向の生地」を端に重ねて処理する作業。

バイアス方向というのは斜め方向の生地になる。

そして斜めの生地は「伸びやすい」という性質を持っている。

つまり、伸び止めテープとは使用用途が違うことが分かると思う。

プリセットについて

Bondなどの機能をオンにするとプリセットの項目が現れる。

プリセット

この項目でプリセットのみならず、更にシミュレーションを詳細に設定できるが...

ほとんど違いがわからなかったため今回の記事では割愛している。

このあたりはシミュレーションプロパティと合わせて継続調査したい。

さいごに

布を硬く/柔らかくするといってもいろいろな選択肢があり迷ってしまうかもしれない。

個人的には「シワがより過ぎた/布が曲がってしまった」といった時にStrengthenをよく使う。

また、一時的に布を固定して他を縫い合わせていく作業にFreezeも重要。

この2つは優先的に覚えておくと良いと思う(使ったら解除も忘れずに)

見た目の変化が少ない機能が多いので個人的にも継続して調査したい。



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謎の技術研究部 (謎技研)